大麻は、アサ科の1年草である大麻草(カンナビス・サティバ・エル)から作られる。大麻の幻覚作用は、テトラヒドロカンナピノール(THC)によってもたらされると言われており、大麻草中のTHCの含有量は、成育地の環境、栽培方法等により異なるが、多いもので8%、平均1%から3%程度である。
乱用される大麻は、その形状、製法、生産地によって様々な名称で呼ばれている。乾燥した大麻草を砕いたいわゆる乾燥大麻は、マリファナ、カンナビス等、大麻草の花穂や葉を樹脂で固めたいわゆる大麻樹脂は、ハッシシュ、チャラス等、大麻樹脂から有効成分を抽出した油状物質は、ハッシシュオイル、ハシュオイル等の名で呼ばれている。
大麻は、経口摂取により乱用される場合もあるが、最も一般的であるのは、吸煙による乱用である。吸煙による乱用の場合、その薬理作用は吸煙の数分後に現れ、3時間から5時間持続するが、経口摂取による場合には、30分から1時間後に現れ、7時間から8時間持続する。一般に、同じ量のTHCを摂取した場合、吸煙による方が経口摂取によるよりも3倍から5倍作用が強いと言われている。
大麻の薬理作用は、摂取方法、摂取量、摂取時の環境、乱用者の性格、気分、薬理作用に対する不安感等によって大きく異なる。吸煙による場合、通常2ミリグラムから3ミリグラムのTHCを摂取すると陶酔感を覚えるようになる。5ミリグラム程度を摂取すると聴覚、視覚の鋭敏化、時間、空間に関する感覚のゆがみ等知覚、感覚の異常が現れるとともに、心拍数の増加、眼球の充血、気管支の拡張等がみられるようになる。更に10ミリグラムから20ミリグラムのTHCを摂取すると、判断力、思考力に障害が生じ、時間の流れに関する感覚が混乱するほか、幻覚が起こる場合がある。更に多くの量を摂取した場合には、幻覚、妄想が生じる状態を経て偏執狂的な興奮状態に陥り、意識障害を伴う症状を呈することがある。
従来、大麻については、耐性は形成されないと言われてきたが、最近、耐性を生じるという学説も唱えられつつある。なお、精神的依存は形成されるが、身体的依存性はほとんどない。
慢性中毒に陥った乱用者は、判断力、記憶力、集中力が低下し、無感動、無気力となる。また、大麻の継続的な乱用を原因とする判断力障害、妄想、不安、不眠等の症状が、継続的な乱用を中止した後も数週間から半年間続いた例が報告されており、フラッシュ・バックのあることも知られている。
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